Eläville ja kuolleille (2005)

Eläville ja kuolleille (2005)

オリジナルタイトル:Eläville ja kuolleille

English Title:For the Living and the Dead

監督:Kari Paljakka

上映時間:95分

製作国:フィンランド

日本劇場未公開

あらすじ

ヤッコの次男マッティが自宅の前に止めていた車の火事で死んでしまう。妻のマリヤが悲しみに暮れる中、ヤッコは火事が自分のせいだと責め始める。マッティの死以前の平凡な生活に戻ろうと努力するヤッコ、マリヤ、そして長男のティモだったが、ことあるごとに火事の記憶が家族全員を苦しめる。

メモ

  • 自らの体験をもとにした Gösta Karf の著作 En junisöndag kvart över tolv の映画化
  • 向かいの家に住むヤッコの父親
  • 両親の安全を電話で確かめるために、毎朝20セントを手に学校へ行くティモ
  • 休み時間に父親に電話するために先生に許可を求めるティモ
  • ティモへのクリスマスプレゼントはレゴ
  • 死んだ息子の苦しみを自分も体験しようと試みるヤッコ
  • この映画の舞台となっている町はカーリス(Karis [sv], Karjaa [fi])だが、映画の元になった事件が起こったのはヤコブスタード(Jakobstad [sv], Pietarsaari [fi])らしい。(各リンク:グーグルマップ)
  • チョイ役でカティ・オウティネンやマルック・ペルトラも登場
  • エンドロールでアキ・カウリスマキへの謝辞

コメント

こういうのをPTSDと言うんですかね? 子供の死によっておかしくなり、そこからなんとか普通の生活に戻ろうと苦しむ家族の物語。事故や病気で死んだ子供の父親や母親、あるいはその両方がおかしくなることを描いている映画も少なくないと思いますが、これが戦時下や貧困に喘ぐ家庭の場合だったりするとまた違った物語になってしまうとも思われます。

マッティを失った苦しみから立ち直ろうとする家族の心理描写が続きますが、個人的にはその家族の背景に描かれるものに興味を覚えるました。主人公ヤッコの家のこぎれいな家の無機質さ、妻マリヤの姉やティモの学校の先生たちの妙な冷たさが目についたりしますが、これらをヤッコの家族の異常な状態が前面に出た時の背景として捉えてしまうからでしょう。おそらくヤッコの家庭はもともとはフィンランドの地方都市に生きる平凡な家族であり、このストーリーがマッティの死に至る事件以前の状態に戻ろうとする家族の物語であることを考えると、その背景にあるものも実は平凡な日常であり、そういう意味では一般的なフィンランドの家庭の生活を見ることができる映画なのかもしれません。

監督の Kari Paljakka は1985年に起こった Gösta Karf の事件について報道するテレビを20年前に見て以来この家族に関して興味を持ち続け、Karfの家族全員への取材を行いながらシナリオを書いたそうです。この物語に長年執着してきた理由のひとつには、監督自身も以前2人の兄弟を事故で失っており、この映画を製作することで兄弟を失った時の両親の苦しみを理解しようとしたのではないかと、インタビューの中で振り返っていました。

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DVD情報

 

Mýrin (2006)

Mýrin (2006)

オリジナルタイトル:Mýrin

English Title:Jar City

監督:Baltasar Kormákur

上映時間:93 分

製作国:アイスランド | ドイツ | デンマーク

日本劇場未公開

予告編

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あらすじ

エルンの5歳になる娘のコーラが幼くして病気で死んでしまう。同じ頃、レイキャビークの郊外のある家で老人の撲殺死体が発見される。この殺人事件を捜査していく中で30年前のレイプ事件の存在が明らかになり、担当刑事のエーレンデュルは殺人事件とレイプ事件の関連を調べていくことになる。

メモ

  • ミステリー
  • アイスランドの推理作家アーナルデュル・インドリダソン Arnaldur Indriðason によるエーレンデュル警部シリーズの中の2000年に発表された小説 Mýrin の映画化
  • エーレンデュルの同僚シグルドゥルの言葉「典型的なアイスランドの殺人事件。汚くてむなしくて、証拠を隠そうともしていない」
  • ホルガで撮られたという墓地の写真(劇中ロシア製と言っているが、ホルガは中国製)
  • 父親のわからないコルブルンの娘。警察の資料担当によれば、このような場合予想できることは、近親相姦かレイプによるもの、あるいは外国人の父親とのこと。
  • スヴィズ(Svið:羊の頭を煮込んだ料理)を食べるエーレンデュル。コールド・フィーバー (1995) にも登場した、一部では有名なアイスランド料理。
  • 悪名高い犯罪者のエリディでも、週末には刑務所から外出ができる。そして日曜は刑務所は休みらしい。
  • グレタルとエリディは、コルブルンはアメリカ軍の基地で身体を売っていたと証言。当時、米軍中心のアイスランド防衛隊の司令部はケプラヴィークにあった。この映画のアイスランドでの公開直前の2006年9月に閉鎖。
  • コーラがかかっていたのは、神経線維腫症という病気
  • 劇中登場する主な舞台はレイキャヴィークと、そこから南西へ約50km離れた街ケプラヴィーク Keflavíkグリンダヴィーク Grindavík(グーグルマップ参照)
  • そしてエウドゥルの墓と彼女の叔母エリンの家の場所(グーグルマップ参照

コメント

上質ミステリー映画。最後に真実が一気に明かされるタイプのミステリーではなく、観客はストーリーの最初の方である程度犯人の目星を付けられることになりますが、事件を追う刑事が犯人に近づいていく過程がダークな雰囲気の中で描かれていて、見ている方もラストまでその緊張感を楽しめる映画でした。見所はそのミステリアスなストーリーばかりでなく、私にとってはスクリーンに登場する多くの要素がアイスランド的なもので、映画の冒頭のシグルドゥルの言葉に倣えば、ひょっとしたらこれは《典型的なアイスランド》についての映画なのかもしれません。荒涼としたアイスランドの風景や水蒸気を上げる大地とか、登場人物が食べるアイスランド料理とか、孤独に生きる人達とか、、、また、最近はテロのおかげで有名になったノルウェーの刑務所の仕組みと同じようなものがここでも見られ、刑務所に入っている犯罪者が週末に外出したり、およそ日本やアメリカを舞台にした映画では見られないシーンでしょう。アメリカ軍の基地の話や人口が30万人ほどのアイスランドの住民すべての遺伝情報を収集する企業など、アイスランド的なものは画面に映るものばかりでなく、登場人物の言葉の裏にもアイスランドの状況が隠れていたりします。

基本的には親と子の関係がストーリーを貫いていて、エーレンデュルと娘のエヴァの関係がエルンとコーラの関係、また他にも、エルンと彼の母親や父親との関係やコルブルンと娘のエウドゥルの関係などに重ね合わされ、殺人事件の謎とそれを捜査するエーレンデュルの私的なストーリーが平行して進んでいきます。また、エルレンドゥルは高層集合住宅で孤独に暮らしていて、遠くから見ると同じ形状で一様に並んだベランダの一つで、煙草を吸いながら朝のひとときを過ごす彼の姿を見ることができ、この映画の中のエーレンデュルとは一般的なアイスランド人を象徴している人物なのだと思われます。

全体的に重苦しい雰囲気の映画ですが、ブラックな笑いもところどころ盛り込まれ、また、しんみりさせるところもあったりして、個人的にはしっかりした娯楽映画に仕上がっているとも思っています。 101 Reykjavík (2000) とか Hafið (2002) とか、評価は高くても少々カルト的な人気の作品ばかりだったバルタザール・コルマクール監督ですが、こういう娯楽作品を作っていれば、彼の作品が日本で公開される日がそのうち来るかもしれません。

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