Den som frykter ulven (2004)

Den som frykter ulven (2004)

オリジナルタイトル:Den som frykter ulven

English Title:Cry in the Woods

監督:Erich Hörtnagl

上映時間:106分

製作国:ノルウェー

日本劇場未公開

予告編

YouTube Preview Image

あらすじ

森で遊び回ることが多い孤独な少年カニクが、森の中の一軒家に住む老女が殺されていると知らせにくる。警察がその一軒家に駆けつけると、老女は顔面を鍬で割られた無惨な姿で発見され、カニクはそこで一人の男を見たと証言する。同じ頃、その日で仕事を辞めて帰国する予定であるデンマーク人の警官カーステンは偶然に銀行強盗に出くわすが、人質を取った犯人に逃げられてしまう。実はその人質とはカニクが見た男と同一人物で、彼は子供の頃から収容されている精神病院から脱走してきたエルキと言う名の男だと判明する。

メモ

  • ミステリー
  • ノルウェー・ミステリーの女王とも呼ばれるカリン・フォッスム Karin Fossum の小説 Den som frykter ulven ([en] He Who Fears the Wolf) の映画化。この映画ではフォッスム自身が脚本も共同で担当。
  • ノルウェーの田舎町にデンマーク人の警官
  • ノルウェーの国旗にホワイト塗ってデンマーク国旗の出来上がり
  • 強盗犯を目撃したカーステンによる犯人の印象:ほお骨が張って目が細い。おそらくサーミ人
  • アーチェリーが趣味の少年カニク
  • 黒髪でロン毛のアルキ。ちょっとサイキック系。
  • 森の中を逃げ回る強盗犯のモルガンと人質となったエルキ
  • 「そんなノルウェー人みたいなことはやめろ」自説に自信がなく躊躇するアギーに対するカーステンの言葉
  • 町の名前は登場しないが、劇中カーステンが地図上で指し示す場所は Årnes(グーグルマップ参照)。ただしロケ地は別の場所のもよう。

コメント

今あらためて見てみると、ノルウェー映画界の若手オールスターキャストとも言っていいぐらいの出演者たち。そこに当時TVシリーズ Rejseholdet (2000–2004) で活躍中だったデンマーク人俳優の Lars Bom が主役で登場し、その上、その後の活躍著しいカメラマンの John Andreas Andersen が撮影を担当していたり、今やノルウェーを代表する監督になってしまったエリック・ポッペ Erik Poppe によるタイトルロールだったり、B級ミステリーっぽい映画にしてはずいぶん豪華な顔ぶれです。

原作を読んだことがないので詳しくはわかりませんが、ネット上の書評などを見ると原作と映画では主人公の設定が変わっているようです。この映画の中の主人公カーステンはノルウェーの田舎町の警察署で働くデンマーク人警官で、この町の人間にとってはよそ者のような感じです。送別会のケーキに飾るデンマーク国旗をノルウェー国旗に修正を加えたもので代用されたり、老女の死体の第一発見者となる少年カニクにノルウェー語の話し方が変だと言われたり、ことあるごとにデンマーク人であることが強調されます。他のだれもが制服を着ている仕事場の警察署では彼だけがラフな私服スタイルで、捜査に対する見解が他の警官仲間たちと違った時などの孤独感をいっそう強いものにします。ただ、一般的なノルウェー人のデンマーク人観については知りませんが、自由で明晰な判断力を持つカーステンに比べ、制服姿のノルウェー人警官たちがあまりにも融通の利かない怠け者のように描かれているので、彼らはデンマーク人に憧れを持っているんじゃないだろうかという妄想まで湧いてきます。

妻が連れて逃げたカーステンの息子アルヴィクと父親が帰ってこない目撃者の少年カニクの状況や、最初は反目していながらも徐々に友情が芽生えてくるという強盗犯モルガンとエルキの関係をカーステンとエルキの担当精神科医サラとの関係に重ねたりしながら物語が重層的に描かれているので、シンプルなストーリーにもかかわらず退屈せずにラストまで一気に観れたんですが、幻覚を見るほど逃げた妻に連れて行かれた息子のことが気になって仕事まで辞めて帰国してしまおうとしていたカーステンなのに、彼女ができたとたん簡単にノルウェーに残ることを決めてしまうとは、息子のアルヴィンやカニク少年がいまいち報われないような気がしてなりません。。。

関連記事、サイト、ブログ等

DVD情報

原作情報

Mýrin (2006)

Mýrin (2006)

オリジナルタイトル:Mýrin

English Title:Jar City

監督:Baltasar Kormákur

上映時間:93 分

製作国:アイスランド | ドイツ | デンマーク

日本劇場未公開

予告編

YouTube Preview Image

あらすじ

エルンの5歳になる娘のコーラが幼くして病気で死んでしまう。同じ頃、レイキャビークの郊外のある家で老人の撲殺死体が発見される。この殺人事件を捜査していく中で30年前のレイプ事件の存在が明らかになり、担当刑事のエーレンデュルは殺人事件とレイプ事件の関連を調べていくことになる。

メモ

  • ミステリー
  • アイスランドの推理作家アーナルデュル・インドリダソン Arnaldur Indriðason によるエーレンデュル警部シリーズの中の2000年に発表された小説 Mýrin の映画化
  • エーレンデュルの同僚シグルドゥルの言葉「典型的なアイスランドの殺人事件。汚くてむなしくて、証拠を隠そうともしていない」
  • ホルガで撮られたという墓地の写真(劇中ロシア製と言っているが、ホルガは中国製)
  • 父親のわからないコルブルンの娘。警察の資料担当によれば、このような場合予想できることは、近親相姦かレイプによるもの、あるいは外国人の父親とのこと。
  • スヴィズ(Svið:羊の頭を煮込んだ料理)を食べるエーレンデュル。コールド・フィーバー (1995) にも登場した、一部では有名なアイスランド料理。
  • 悪名高い犯罪者のエリディでも、週末には刑務所から外出ができる。そして日曜は刑務所は休みらしい。
  • グレタルとエリディは、コルブルンはアメリカ軍の基地で身体を売っていたと証言。当時、米軍中心のアイスランド防衛隊の司令部はケプラヴィークにあった。この映画のアイスランドでの公開直前の2006年9月に閉鎖。
  • コーラがかかっていたのは、神経線維腫症という病気
  • 劇中登場する主な舞台はレイキャヴィークと、そこから南西へ約50km離れた街ケプラヴィーク Keflavíkグリンダヴィーク Grindavík(グーグルマップ参照)
  • そしてエウドゥルの墓と彼女の叔母エリンの家の場所(グーグルマップ参照

コメント

上質ミステリー映画。最後に真実が一気に明かされるタイプのミステリーではなく、観客はストーリーの最初の方である程度犯人の目星を付けられることになりますが、事件を追う刑事が犯人に近づいていく過程がダークな雰囲気の中で描かれていて、見ている方もラストまでその緊張感を楽しめる映画でした。見所はそのミステリアスなストーリーばかりでなく、私にとってはスクリーンに登場する多くの要素がアイスランド的なもので、映画の冒頭のシグルドゥルの言葉に倣えば、ひょっとしたらこれは《典型的なアイスランド》についての映画なのかもしれません。荒涼としたアイスランドの風景や水蒸気を上げる大地とか、登場人物が食べるアイスランド料理とか、孤独に生きる人達とか、、、また、最近はテロのおかげで有名になったノルウェーの刑務所の仕組みと同じようなものがここでも見られ、刑務所に入っている犯罪者が週末に外出したり、およそ日本やアメリカを舞台にした映画では見られないシーンでしょう。アメリカ軍の基地の話や人口が30万人ほどのアイスランドの住民すべての遺伝情報を収集する企業など、アイスランド的なものは画面に映るものばかりでなく、登場人物の言葉の裏にもアイスランドの状況が隠れていたりします。

基本的には親と子の関係がストーリーを貫いていて、エーレンデュルと娘のエヴァの関係がエルンとコーラの関係、また他にも、エルンと彼の母親や父親との関係やコルブルンと娘のエウドゥルの関係などに重ね合わされ、殺人事件の謎とそれを捜査するエーレンデュルの私的なストーリーが平行して進んでいきます。また、エルレンドゥルは高層集合住宅で孤独に暮らしていて、遠くから見ると同じ形状で一様に並んだベランダの一つで、煙草を吸いながら朝のひとときを過ごす彼の姿を見ることができ、この映画の中のエーレンデュルとは一般的なアイスランド人を象徴している人物なのだと思われます。

全体的に重苦しい雰囲気の映画ですが、ブラックな笑いもところどころ盛り込まれ、また、しんみりさせるところもあったりして、個人的にはしっかりした娯楽映画に仕上がっているとも思っています。 101 Reykjavík (2000) とか Hafið (2002) とか、評価は高くても少々カルト的な人気の作品ばかりだったバルタザール・コルマクール監督ですが、こういう娯楽作品を作っていれば、彼の作品が日本で公開される日がそのうち来るかもしれません。

関連記事、サイト、ブログ等

DVD、原作本情報

Alting bliver godt igen (2010)

Alting bliver godt igen (2010)

オリジナルタイトル:Alting bliver godt igen

English Title:Everything Will be Fine

監督:クリストファー・ボー Christoffer Boe

製作国:デンマーク | スウェーデン | フランス

上映時間:90分

日本劇場未公開

予告編

あらすじ

締め切りの迫っているシナリオライターのヤコブは、帰宅途中に青年アリを車ではねてしまう。ひん死の重傷のアリは、駆け寄ったヤコブに自分の荷物をもって逃げるように言う。ヤコブは動転したままアリの言葉に従いその場を離れるが、アリの荷物の中に中東で捕虜を拷問するデンマーク兵の写真を発見する。スキャンダラスな写真の事実について調査を始めたヤコブだったが、その時からヤコブは周囲に怪しい気配を感じ始める。

ひとくちコメント

  • スリラー/ミステリー
  • 2011年デンマーク・アカデミー賞の数部門でノミネート。ただしどれも受賞に至らず。
  • 前作 Offscreen (2006) から4年振りのクリストファー・ボーの長編
  • 仕事に悩む芸術家
  • 舞台はコペンハーゲン・・・らしい
  • ヤコブの世界とアリの世界
  • デンマーク映画おなじみの俳優陣(イェンス・アルビヌス、パプリカ・スティーン、ニコラス・ブロほか)が不思議なストーリーを支える
  • 街並の見せ方が独特
  • 台所用品で拷問?

追記

相変わらず都会派でおしゃれな画作りのクリストファー・ボーです。街の汚い部分は全くと言っていいほど出てきません。前作 Offscreen とはジャンルやプロットこそ違いますが、登場人物が映画製作と同時にその仕事とパートナーとの関係で悩むなど、似ている部分があるようにも思います。主人公のヤコブがあまりに神経質そうで、観客はヤコブに振り回される周囲の人物たちの立場でこの主人公を見てしまうような気もしますし、その点でも前作に似ているのかもしれません。
ストーリーの内容はよくあるようなミステリーものですが、映画内にでてくる海外派兵、諜報組織、養子縁組などにかんして細かく描かれているわけではないので、デンマークにおけるこれらの状況に関する情報をほとんど持たない日本人にとって、その辺りはピンと来ないかもしれません。

DVD情報

 

Ads by Sitemix